宮崎看護大学 平成28年度 特別入学試験 小論文

 次の二つの文章(文一、文二)を読んで後の問いに答えなさい。

 

(文一)

 あいさつというと、またか、といわれてしまう程もうそれをすることは当たり前になってしまっています。しかし、一方で“あの人はあいさつもロクにできない”などという言葉も生きているのが現実です。あいさつというものは、ただすればよいというものでもないのです。

 あいさつはより良い人間関係の第一歩、と言われます。同じ「おはよう」でも“今日一日よろしくね”とか“気持ちの良い朝ね”といった、相手との間に親しみの心が通う、気持ちの込もった明るいあいさつをしたいものです。そのためには、あいさつはだれにでも先にすることが大切です。後輩なんだから向こうから先にすべきだ、と考えるのは相手との間にわだかまりをつくっているのと同じことなのです。

 先に声をかけられると人はだれでも嬉しいものなのです。相手を見かけたら親しみを増すチャンスと思ってとにかく先に声をかけることです。

 

(文二)

 魔法の言葉、マジックフレーズというのをご存知ですか。何が魔法なのかというと、この言葉を聞いて悪い気持ちになる人はいない、だれもが心ゆたかになる言葉なのです。

 まず第一にお礼の言葉があります。「ありがとうございます」「イ」。

 二番目にお詫びの言葉があります。「ロ」「ハ」。

 最後に、ねぎらいの言葉です。「ニ」

 もちろん他にもたくさんあるのですが、大きく分けてこの三つです。これらの言葉は自尊心を守った言葉ということができます。

 たとえば、道を歩いていると、立ち話をしている人が前方をふさいでいたとします。もちろん、道をふさいでいる人に非があるのですけれども、いきなり「ちょっとそこ、どいてください」と言ったのでは相手もおもしろくありません。そんなとき「ホ」と道を開けてもらい「ありがとうございました」と過ぎていけば“感じが良い人”という黄にもなるわけです。

(千名裕編『エキスパートナースのためのマナーブック』中央法規出版)

 

問一 文一、文二の二つの文章に共通して貫かれている、筆者の考えはどういうことでしょうか。一〇〇字以内で述べなさい。

 

問ニ 文二中のイ、ロ、ハ、ニ、ホに、文意を汲んで入ると思う「魔法の言葉」をそれぞれあげなさい。また、それが何故、「魔法の言葉」なのか、あなたの経験の一例をあげ、三〇〇字以内で述べなさい。

 

問三 あいさつも「魔法の言葉」にすることができると思います。そのような観点から、文一の傍線部、「あいさつもロクにできない」とは、どういうことであるのか、あなたの経験した具体的な場面を挙げて、四〇〇字以内で論じなさい。

 

【解答】

問一

 (文一)には「先に声をかけられると人はだれでも嬉しい」とあり、(文二)には「この言葉を聞いて悪い気持ちになる人はいない、だれもが心ゆたかになる」と書かれている。言葉には相手の気持ちを好転させるものがある。

 

問ニ

イ、感謝します    ロ、すみません    ハ、ごめんなさい

ニ、お疲れさまでした    ホ、すみません

 

 これらの言葉は、自己中心的ではなく、相手の立場を尊重した立場からの言葉である。

 人は自分が尊重されているとわかると、自らも衿を正し、無闇な言動はとれなくなる。この心理を利用したものに、コンビニなどのトイレに書かれている「きれいにご利用いただきありがとうございます」がある。客はトイレを借りている立場なのにお礼まで言われると、つい申し訳なく思い、せめて汚さないように使おうと思うし、よもや悪戯や器物損壊をしようとは思わない。

 挨拶にも同じ効果がある。これらの言葉により、相手も知らず穏やかな言葉を返すようになる。それを聞き、こちらもよい気持ちになるというように、相乗的にその場の空気を変えていく効果がある。

 

問三

 「あいさつもロクにできない」の「も」が重要だ。そこには、挨拶程度のことができないならば、仕事もできないという含みがある。

 父が寝たきりになり入院していたことがあった。自力でトイレに行けず、看護師さんにオムツを交換してもらっていたのだが、その病院ではオムツの交換時間が予め決められており、その予定の交換も忘れられることが度々で、四、五時間オムツに便をためたままで放置されることが頻繁にあった。

 もちろん、時間以外に交換を求めてもいいのだが、それは看護師さんにとってとても面倒なことのようで、父が便をし、部屋がプンと匂い始めると、だれも病室に入ってこようとはしない。病室の前を通る看護師も、「忙しい」感じを振りまいて、挨拶もそこそこに足早に通り過ぎるのだ。

 患者に声を掛けられると困るから挨拶もしないとは、何と殺伐とした病院だろう。少なからず、挨拶は病院がうまく回っているかどうかのバロメータにはなると思う。

 

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T・Oさん(高3)からの依頼。

問三の解答は、設問に即していない点でも、現在の病院批判がキツい点でも、あまりよい作文ではないですね。

今回は、問題を初見でその場で15分くらいで解く必要があったので、こんなことになりました。

ちなみに病院の話は私の体験談。私の地元には、いい病院もなくはないのですが、そこはいつも一杯で、庶民は、ほとんど病院とも呼べない隔離施設に収容されます。

これから看護士になる人に期待したいところですが、腐った職場で腐らずにいられることは、奇跡に近いことでしょうね。

ぜひ勉強をがんばって、まともな病院に就職してほしいものだと思います。